今月の提言


6月&7月の提言:『コロナ禍の政府の危機管理を反面教師として何を学ぶか』

政府は新型コロナがリバウンドの兆しがある中で6月20日に緊急事態宣言を沖縄以外は解除し、「まん延防止」に移行した。東京の実効再生産数が1を超えてリバウンドが鮮明になるなかで、また宣言発出、酒類提供停止が政府はもとより国民の間で話題になっている。

コロナ危機が顕在化してすでに16カ月経過した。そこで、これまでの政府の危機対応を振り返り、反面教師として学ぶべき点を述べてみたい。

まず、自明のことかもしれないが、危機管理とリスク管理とは違う点に注意しよう。危機管理とは危機下においてマイナスの影響を最小限にして回復を図ることだ。一方、リスク管理は想定されるリスクを抽出しその防止策を検討、実行することが基本である。つまり、リスク管理は想定されるリスクを未然に防ぐことがポイントだ。

昨年来のコロナ危機で、はたして政府や自治体は「マイナスの影響を最小限にして回復」を図ってきただろうか。この点を述べる前に、危機(クライシス)発生時の初動対応から事態沈静化までの成功要因と失敗要因をみてみよう(注)。

デロイトトーマツグループの調査によれば、成功要因のトップ3は次の通り。
  1. 「トップのリーダーシップ、トップダウンでの迅速な意思決定がなされた」(54.0%)
  2. 「クライシス発生に備えた事前の組織の枠組みができていた」(42.4%)
  3. 「情報収集・伝達ルートと収集情報の分析・判断のルールが整備されていた」(42.4%)
一方、失敗要因として多いのは次の2点である。
  1. 「クライシス発生に備えた事前の準備ができていなかった」(37.9%)
  2. 「外部専門家を活用しなかった、または有効に活用できなかった」(19.7%)
つまり、危機対応の成否は、トップのリーダーシップの発揮、体制づくりや情報収集などの事前準備そして外部専門家の有効活用の3点に要約されよう。そして、これらの視点から今回のコロナ危機をみると、危機対応は落第点をつけるしかない。

まず、トップのリーダーシップで迅速な決定が行われたとはほど遠い状況である。安倍政権時の昨年4月7日に発出された最初の緊急事態宣言から五輪バイアスもあって後手に回った。その後菅政権における今年1月8日に発出の2回目の宣言、そして3回目の4月25日の宣言も後手に回った。また、下げ止まらないまま中途半端な解除を繰り返し今日に至っている。

事前準備や体制づくりは筆者にはほとんど行われていなかったとしか思えない。コロナ危機の有効な対策はワクチン接種だと分かっていながら、1年以上も無為無策が続いた。そして、菅首相が高齢者向けワクチン接種は7月末に完了させるといいながら、7月になってワクチン供給が滞っているという。場当たり的でワクチン担当大臣を任命したが、戦略的計画性は皆無に等しい。

外部の専門家の活用にいたってはほとんど茶番に等しい。いわゆる分科会の尾身会長他の専門家は政府の決定事項にお墨付きを与えるだけだ。菅首相をはじめ専門家の知見に耳を傾ける気は毛頭なく、「国民の命、安全安心が第一」という言葉が虚しく聞こえる。

さらに、緊急事態宣言は危機対応の手段だが、回を重ねるごとにシグナリング効果は薄れてくる。安倍政権時代から菅政権に至るまで、何度も「極めて重要な時期」「大変厳しい状況」という言葉を聞いている。その度に期待を裏切られリバウンドするのでは国民の行動変容を期待できなくなって当然だ。今は行動経済学という分野がある。どうすれば人々の行動変容を促すかという研究も進んでいる。一国のトップや首長はこうした知見を活かして、国民に語りかけてほしい。

コロナ危機対応に関しては、五輪開催ありきの五輪バイアスを強く感じる。企業行動においては五輪バイアスなどありえない。政府の危機対応を反面教師として、上述した成功要因、失敗要因を踏まえて危機管理体制を構築してほしい。


注:
デロイトトーマツグループの調査結果は詳しくは下記を参照.

https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/news-releases/nr20200219.html



【竹生孝央(ちくぶ・たかお)】(2011年より孝夫を「孝央」と改名しました。読みは同じです)

 


ホーム当社について戦略コンサルティングと私たち|トップ&ミドルへの提言
コンサルティングのご案内人材募集リンク集サイトマップ

E-mail お問い合わせ
info@csconsult.co.jp
Copyright 1997-, C&S Consultants, Inc. All rights reserved.