今月の提言


3月&4月の提言:『活性化しない消費に3つの革新を!』

消費の低迷が続いている。家計調査ベースでみると、1980年代前半頃までは勤労者世帯の平均消費性向は77%から79%だった。ところが、2015年平均の73.7%から2016年6月は69.4%、 7月は69.3%と連続して大きく低下した。そして2018年の平均消費性向も69.3%にとどまっている。つまり、消費者は2015年に比べて4%以上も所得から貯蓄に回す割合を増加させている。たとえ実収入や可処分所得が微増しても消費性向が低下しているのでは消費が低迷するのも当然だ。

従来は円安による物価上昇で生活防衛に走ったと説明されていた時期もあったが、ともに安定している状況では単純な生活防衛では説明しきれない。そこで、仮説として消費性向の低下は先行きの年金不安による消費抑制が原因だといわれている(注1)。

そして、最近では消費が活性化しない理由として次の6つが指摘されている(注2)。
  1. 経済不安の高まり〜現役世代の雇用不安や社会保障不安、高齢者の生活防衛意識
  2. 高齢化の進行〜世帯当たりの消費額が減り、賃金増の影響を受けにくい高齢世帯の存在感
  3. 消費社会の成熟化〜商品・サービスの低価格化や高機能化、シェアでお金を使わずにすむ
  4. 価値観の変容〜消費欲求の弱まりとスマート消費、使わないことが格好がよい
  5. 欲しい商品・サービスの欠如〜子どもの教育はインフレ気味、工夫で売れるものもある
  6. 消費統計上の課題〜シェア消費やケータイ払いなど、十分に捉えられていない消費も
先行きの不安や上述した理由で消費性向まで低下すればマクロでみて消費が活発になるわけがない。年金不安などの経済不安は政府の無策によるものだが、だからといって企業が政府の政策頼りでは未来を描けないのである。

国内消費が停滞している中で、次の3つの市場にどう絡むかが今後の企業の盛衰を分けるといわれている(注3)。
  1. AI, IoT及びICT市場
  2. グローバル市場
  3. 高齢者市場
上記の3つの市場の重要性は改めて説明するまでもないので割愛する。ここでは、消費低迷を打開するためのモノやサービスの次の3つの革新をお薦めしたい(注4)。
  1. 高付加価値革新
  2. ターゲット革新
  3. 売り方革新
上述した3つの革新は、衰退市場あるいは低迷する市場で成功したモノやサービスの事例から分類したものだ。

まず、高付加価値革新は、従来の発想を変えた高付加価値商品づくりでヒットさせるものだ。逓減する袋麺市場を活性化させた東洋水産の「マルちゃん正麺」が事例としてあげられる。街のラーメン屋に近づけるためにフライ麺からノンフライに替えて市場を蘇らせたのである。鳴海製陶の「クックボウル」も調理後そのまま食卓に出せるように直火にかけることができるお皿を開発しヒット商品となった。象印マホービンの「極め羽釜」「南部鉄器・極め羽釜」はご飯がおいしく炊ける高級炊飯ジャーでヒットした。10万円以上する炊飯器が高齢者層や内食志向のこだわり層に受け入れられた。このようにな従来の発想を変えた商品開発事例が消費低迷下のヒット商品・サービスづくりのヒントになるだろう。

次に、ターゲット革新は、衰退市場の商品を従来のターゲットからずらすことでヒットさせるものだ。コクヨS&Tの「鉛筆シャープ」は鉛筆の芯に発想を得た太い芯のシャープペンシルで、ターゲットを子どもから大人にすることでヒットした。ワーナーミュージック・ジャパンは低迷するCD市場で「OPUS ALL TIME BEST 1975-2012」をヒットさせた。映画館でのライブ映像上映、テレビでの予告編の報道等を活用することで従来のコアファンからグレーゾーンへの拡販に成功したのである。また、ラジオ体操といえば夏休みの子どもを思い出す。ラジオ体操は2011年の東日本大震災後、誰でもできる運動として大人向けに復活した。美容・ダイエット本のベストセラー化と並行して20代から30代の女性の美脚、くびれ効果で支持を集めたのだ。

最後に、売り方革新は、従来型の化粧品訪問販売市場が逓減する中で、ノエビアは美容サロン「ノエビアビューティスタジオ」を開設することでアドバイス機能強化とコミュニティづくりに成功し業績を回復させた。かつての珠算塾も縮小する市場の代表例だ。イシドが直営及びFCで展開する「石戸珠算学園」「いしど式速算義塾」他は、楽しさと子どもの能力開発を訴求し従来の珠算塾から変革した。現在、直営校、加盟校を含め全国170教室のチェーンとなった。

以上、衰退市場での成功事例をもとに3つの革新について述べた。衰退市場を消費低迷と読み替えれば、ヒットを生むヒントがあると思う。製造業もサービス産業も3つの革新の具体案を練り実行することで、近未来に光明がみえてくるのではないか。


注1:
消費性向低下についての仮説は,下記の「消費の謎,低下する消費性向:経済の羅針盤」を参照のこと.

http://www3.keizaireport.com/report.php/RID/288086/

注2:
ニッセイ基礎研究所の生活研究部主任研究員久我尚子氏による下記のレポートを参照.

「なぜ消費は活性化しないのか〜活性化を阻む6つの理由」(2018年10月)

https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=59983?site=nli

注3:
以下は2016年10月の提言:『消費低迷の謎に企業は3つの革新で対処せよ!』の一部を加筆訂正した.

http://www.csconsult.co.jp/teigen/1610.html

注4:
3つの革新の事例に関しては下記及びweb上の記事情報等を参照した.

週刊東洋経済eビジネス新書『衰退市場でのヒットを飛ばせる』(東洋経済新報社,2013年5月)



【竹生孝央(ちくぶ・たかお)】(2011年より孝夫を「孝央」と改名しました)

 


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