今月の提言


9月の提言:『働き方改革を実効あるものにするために!』

最近どこへ行っても働き方改革の話題が多い。特に電通の問題が表面化してから働き方改革に本気で取り組みだした企業が増えたような気がする。2017年度ニッセイ景況アンケート調査によると労働時間短縮に取り組む企業は6割強、大企業では9割近くになる。数字の上では働き方改革が進んでいるようにみえる。

恐らくビジネスパーソンの方々は目にされたと思うが、9月13日付日経朝刊の「働き方改革に関するお詫び」と題するサイボウズの全面広告に驚いた方も多いだろう。サイボウズはこれまで「働き方改革」を推進してきた企業として知られている。意見広告では「お詫び」となっているが、実は今官民が進めている働き方改革に疑問を投げかけているのだ。

全文は注1の写真をご覧いただくとして、サイボウズ社長の青野慶久氏は「(働き方改革をに対する)私たちの意思は全く伝わっておりません。とにかく残業させまいとオフィスから社員を追い出す職場、深夜残業を禁止して早朝出勤を黙認する職場、働き方改革の号令だけかけて現場に丸投げする職場、なんですか、そのありがた迷惑なプレミアムフライデーとやらは」と述べて、現状が同社の発信してきた内容とは異なることを指摘している。そして、やや皮肉に聞こえるが発信力の不足を詫びているのである(注1)。

サイボウズはアニメ作家内山勇士氏に依頼して働き方改革のイメージを伝えようと、「残業編」「女性活躍編」「イクメン編」の3本のアニメを作成して公開している。3本で約10分のアニメだが同社のいいたかったメッセージは伝わる。「働き方改革、楽しくないのはなぜだろう」という同社のサイトにはアニメ3本がリンクされ、そして、Special Contentsでは青野社長とアニメの登場人物後藤さん(アリさん)との対談の形で、同社の働き方改革の概要を解説している。そのエッセンスは次の言葉に要約される(注2)。

「強制する『画一性』ではなく、自分で選べる『多様性』を」

つまり、午後6時に退社、月末の金曜日は午後3時に退社、育休は1ヶ月などと強制するのはバッドなのである。サイボウズでは労働時間の長短、働く場所が会社か自由かを表頭と表側に取ったマトリックスによって社員が自由に選べる「選択型人事制度」を採用しているという。このようにサイボウズは多様性を重視して社員が自由に働ける環境を整えようとしている。青野社長は会社が社員に強制するのはビジョンと理念だという。まさにわが意を得たりである(注3)。

ところで、時を同じくして経団連から『働き方改革事例集』が公開された。経団連は2016年度を「働き方改革集中取組年」と位置づけ、昨年7月に「経営トップによる働き方改革宣言」が公表された。事例集は上場企業15社の事例を紹介したものだ(注4)。

詳細は事例集を参照していただくとして、要約すると主な取り組みは次の通りである。
  • 時短の推進。
  • 育児・介護支援の促進。
  • フレックスタイムの導入。
  • テレワーク(在宅勤務制度)の導入。
  • 週休3日制の試験的導入、
事例集を一読した印象は、強制する画一性を感じた点と一部の企業は試行しているがまだ多様性や個人の選択の幅が少ないという点だ。歴史のある企業にとって変革への道は難しいが、働き手が少なくなる将来を見据えて働き方改革を進めてほしい。

各社の働き方改革への取り組みをみると、自社の内部管理に限定されているケースがほとんどだ。しかし、クライアント、発注先の要求が労働時間の短縮や残業解消の阻害要因になっているケースもあるのではないか。もちろん、顧客の要望に迅速に対処する、突発的な問題に対処することは当然だと思う。ただ、業界によっては、例えば広告業界のように終業直前あるいは終業後の突然のクライアントの修正要求に右往左往することもあるだろう。働き方改革は自社内だけでなく、顧客を含めたステークホルダー全体が理念を共有し推進すべき課題だと思うのである。

そこで、顧客を含む社内外のステークホルダーに対して新たに宣言を行ってはどうか。ステークホルダーとともに歩む企業である以上、働き方改革は顧客や社外の関係者も含めて理念、価値観を共有しなければ、真の改革は実現しないと思う。「みんなで考えよう、働き方改革」として社内外に改めて宣言することで改革がさらに前進することを期待したい。


注1:
サイボウズの意見広告全文は下記を参照.

http://www.csconsult.co.jp/images/1709_hatarakikata.JPG

注2:
サイボウズの「働き方改革,楽しくないのはなぜだろう」というサイトは下記をクリックすればご覧いただけます.

https://cybozu.co.jp/20th/

注3:
ビジョンと理念の重要性は拙著『ブランディング・カンパニー』に述べた通り.そして,当社の戦略コンサルティングのテーマの一つは「ビジョン・マネジメント」である.

注4:
経団連の『働き方改革事例集』は下記を参照.

http://www.keidanren.or.jp/policy/2017/072.pdf



【竹生孝央(ちくぶ・たかお)】(2011年より「孝央」と改名しました)

 


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