今月の提言


7月&8月の提言:『夏季休暇に読むべきお薦めの5冊!』

今年も夏季休暇の時期になってお薦めの本をピックアップしてみた。今回も古典と比較的新しい書籍から5冊を選んでみた。いずれも未来のマネジメントを考えるうえで参考になると思う。もし興味がある書物があれば是非夏季休暇中にご一読いただければ幸いである(注1)。

今年のお薦めは次の5冊(ポーターの本は2冊なので実質6冊)である。
  1. 『孫子』
  2. ポーターの『競争戦略』『競争優位の戦略』
  3. 『ブルー・オーシャン戦略』
  4. 『ビジョナリー・カンパニー2/第五水準のリーダーとは』
  5. 『HARD THINGS』
中国最古の兵法書『孫子』は十三篇からなる。実践から育まれた深い思想と現実的な記述は単に兵法を超えて人生の書でもある。もちろん、ビジネス、マネジメントにおいても示唆に富む点は昨年のお薦めの書マキャベリの『君子論』と同様だ。

たとえば、謀攻篇に「百戦百勝は善の善なる者に非ざるなり。戦わずして人の兵を屈するは善の善なる者なり」という記述がある。これを読んで、筆者は戦略的コミットメントを想起したが読者諸兄姉はいかがだろうか。

マイケル・ポーターの『競争の戦略』と『競争優位の戦略』は今や現代の古典で詳細な解説は不要だと思う。多くのビジネスパーソンは一読されたことだろう。「ファイブフォース分析」や「バリューチェーン」は戦略づくり、経営分析の不可欠なツールだ。筆者は80年代前半に初めて読んでから時々目を通している。その時々の課題にヒントを与えてくれるのも「古典」たる所以である。夏休みの余裕がある時期に再読されることをお勧めしたい。

『ブルー・オーシャン戦略』も2005年の初版以来世界で360万部44カ国語で出版されたベストセラーである。2014年に新版が出版されて実践的アプローチが加わった。新版の監訳者入山章栄氏によると旧版は日本ではあまり売れなかったという。日本では未開拓の市場「ブルー・オーシャン」で戦うよりも、既存ビジネスの枠内での競争の激しいレッド・オーシャンにおける「経営統合」「業界再編」「リストラクチャリング」等の改革に注力していたからだ。

だが、環境が変わった。入山氏も新版の序文で指摘しているように、いま求められるのは新しいビジネスモデルの創造や新顧客の開拓であり、既存ビジネスの枠組みの変革である。つまり、いまこそブルー・オーシャン戦略が求められる。初版では日本の稀少なブルー・オーシャン企業としてQBハウスが取り上げられたが、最近ではパーク24、オフィスグリコ、俺のイタリアンなど後続のブルー・オーシャン企業(事業)が出現している。

新版ではブルー・オーシャン戦略をより実践的にするために第9章、第10章、第11章が追加された。本書を参考に「メリハリのある戦略キャンバス」と「市場の境界の引き直し」を両軸にとったポジショニングマップを描いて、ブルー・オーシャン戦略を実践してみてはどうか。

ジム・コリンズの最初の『ビジョナリー・カンパニー』は偉大な企業を多面的に分析した。その結論は偉大な企業は偉大な創業者によるというものだった。では、普通のよい企業が偉大になるにはどうするか。この問いに答えるのが『ビジョナリー・カンパニー2/第五水準のリーダーとは』である。原題が「Good to Great」であるように、普通のよい企業が偉大になる飛躍の法則を述べたものだ。

コリンズは偉大な企業の調査によって、「よい企業を偉大な企業に変えるために必要なリーダーシップの型」を発見した。それが第五水準のリーダーシップなのだ。第五水準までの段階は下記の通りである(注2)。

第一水準:有能な個人
第二水準:組織に寄与する個人
第三水準:有能な管理者
第四水準:有能な経営者
第五水準:第五水準の経営者

第一から第四水準までは説明は不要だろう。コリンズによれば第五水準の経営者の定義は次の通り。

「個人としての謙虚と職業人としての意思の強さという矛盾した性格の組み合わせによって、偉大さを持続できる企業を作り上げる」

つまり、謙虚さと不屈の精神を合わせ持つ経営者が偉大な企業に変身させるのである。筆者は第三章「だれをバスに乗せるか」に共感したが、一般的な日本企業の雇用慣行では実践は難しいだろう。いずれにせよ、企業の飛躍を考える経営トップは第五水準を目指し本書を熟読することをお勧めしたい。

最後は、『HARD THINGS』である。著者のベン・ホロウィッツはシリコンバレーのベンチャーキャピタル、アンドリーセン・ホロウィッツの共同創業者。最強のベンチャーキャピタリストとして知られる。本書は起業家向けの異色の経営書といえるが、さまざまな課題に直面する経営トップにとってもヒントが満載である。たとえば、本書の主なテーマは次の通り。
  • 人を正しく解雇する方法
  • 幹部を解雇する準備
  • 親友を降格させるとき
  • なぜ部下を教育すべきなのか
  • 大企業の幹部が小さな会社で活躍できない理由
  • 経営の品質管理が必要だ
  • 社内政治を最小限にする方法
  • 正しい野心と間違った野心
  • 優秀な人材が最悪の社員になる場合
  • 個人面談は人事管理の最重要ツール
  • 企業文化を構築する
  • 会社を急速に拡大させる秘訣
  • 成長を予測して人材を評価する誤り
  • 「ワン」型CEOと「ツー」型CEO
  • 平時のCEOと戦時のCEO
  • CEOを評価する基準
以上、今回は5冊の推薦書を紹介したが、お気に入りの書物があれば幸いである。


注1:
5冊の推薦書に関し『孫子』以外は版元等の情報は割愛した.お気に召した書籍に関してはアマゾンや書店等でご確認ください.なお,『孫子』は下記がお薦めだ.

金谷治訳『新訂 孫子(岩波文庫)』 (岩波書店, 2000年4月)
https://www.amazon.co.jp/%E6%96%B0%E8%A8%82-%E5%AD%AB%E5%AD%90-%E5%B2%A9%E6%B3%A2%E6%96%87%E5%BA%AB-%E9%87%91%E8%B0%B7-%E6%B2%BB/dp/4003320719

注2:
『ビジョナリー・カンパニー 2 』の飛躍企業11社は下記の通り.11社中現在も勝ち組なのは8社(丸印).
  • アボット(ヘルスケア) ○
  • サーキット・シティ(家電量販店)→2009年に破綻
  • ファニー・メイ(連邦住宅抵当公庫)→2008年経営破綻
  • ジレット(化粧品)→2005年にP&Gが買収
  • キンバリー・クラーク(家庭用品)○
  • クローガー(食品小売チェーン) ○
  • ニューコア(鉄鋼) ○
  • フィリップ・モリス(現アルトリア・グループ)(タバコ) ○
  • ピットニー(ピツニー)・ボウズ(コンピュータ・システム)○
  • ウォルグリーン(ドラッグストア)○
  • ウェルズ・ファーゴ(金融業)○




【竹生孝央(ちくぶ・たかお)】(2011年より「孝央」と改名しました)

 


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