今月の提言


1月の提言:『2019年のビジネス・キーワーは“GATE”!』

2018年の世界経済は年央から減速傾向で年末には世界で株が急落するなど先行き不透明化のある一年だった。日米ともに景気拡大が続いていて、2019年7月には史上最長の10年、120か月を超えるかどうかが注目される(注)。

一方、日本経済は2012年12月から続く景気拡大局面が高度成長期の「いざなぎ景気」(1965年11月〜70年7月、57カ月)を超えて、17年9月まで58カ月と戦後2番目の長さになったと認定された。19年1月で戦後最長の「いざなみ景気」(2002年2月〜08年2月、73カ月)に並ぶ見通しだ。

だが、昨年12月に発表された7〜9月期のGDP改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0.6%減、年率換算では2.5%減と下方修正。より生活実感に近い名目GDPは前期比0.7%減、年率は2.7%減と同じく下方修正された。10月の家計調査によると消費支出は2カ月連続減となっており、10〜12月期の動向が気になるところだ。

2019年については、後半には世界経済が減速から後退局面に入り、景気を下支えしてきた輸出が減少するとの見方が多い。10月には消費税増税も予定されており、日本経済は正念場を迎える。

2019年は亥年、証券業界には「亥固まる」という格言があり、亥年は成長に向けて「足下を固める一年になる」という。世界経済、日本経済は減速あるいは景気後退の可能性があるだけに、今年は先を見据えて経営基盤を強化するとともに「未来の扉(GATE)」を開く年になることを祈願したい。

こうした観点から、今年のビジネス・キーワードは、

“GATE”

とした。GATEは下記の頭文字をとったものである。

Global Business Portfolio(グローバル・ビジネス・ポートフォリオ)
Acquisition Age(買収時代)
Tackle the Recession(景気後退への対処)
Evolving Corporate Governance(企業統治の進化)

今年は近い将来起こりうる景気後退に備えて未来に向けて一層飛躍するための固めの年にしたい。そのためには、すでに海外展開が活発な企業も超ドメスティックといわれる企業もグローバル・ビジネス・ポートフォリオを再考すべきである。つまり、世界経済、日本経済が景気後退局面になっても相対的に成長ポテンシャルが高い先進諸国での展開や新興国、開発途上国への進出を模索してはどうか。

世界経済は、先進国と新興国が揃って景気拡大する「プラスサム」から、米国が牽引する先進国の景気拡大とドル金利の上昇が新興国の足かせとなる「ゼロサム」に移行している。そして米国が景気後退局面に入れば、世界経済は勝ち組不在の「マイナスサム」に入る可能性もありうる。

しかしながら、ゼロサムからマイナスサムの次の局面に向けてグローバルなビジネス・ポートフォリオを構築すべきだと思う。先ずは先進諸国のエリア・カバレッジを拡充し、そして新興国や途上国での展開が望まれる。例えば、BRICsを除くとバングラデシュ、ミャンマー、パキスタン、フィリピン、ベトナムそしてアフリカの一部の国などが今後10年での成長が期待される。

このようなグローバル・ビジネス・ポートフォリオの構築にあたって、IN-OUT(日本企業による海外企業の買収)あるいはIN-IN(日本企業による日本企業の買収)と呼ばれるM&Aを活用すべきだろう。今年に入って武田薬品工業はアイルランドの製薬大手シャイアー社の買収が完了し、7兆円で完全子会社化した。過去最高の買収額だが、武田薬品は世界のメガ製薬会社の一角に入ったことになる。今後は海外売上高比率が高い多国籍企業も超ドメスティック企業も成功の鍵(KSF)は買収、M&Aの巧拙にある。まさにM&A時代、買収時代の到来である。

昨年は年末近くになって日産のゴーン元会長の逮捕の報道に驚いた方は多いことだろう。ゴーン氏の日産再建への貢献は称賛に値する。そして、長期政権を必ずしも否定するものではない。筆者は神戸大学の三品和広教授が主張しているように、リーダーシップのある優れた経営者は少なくても10年スパンで経営に携わるべきだと思う。また、グローバル企業のトップの報酬も、真のプロの経営者であれば世界標準にすべきだ。

ただ、長期政権により独裁者になって公私混同を含め企業価値の減損に影響が及ぶのは防ぐべきである。そのためには、日産のケースを他山の石として、コーポレート・ガバナンスの強化をすることが肝要だ。周知の通り、コーポレート・ガバナンスの目的は、企業不祥事を防ぐこと、及び企業の収益力を強化し企業価値を高めることである。企業統治は株主のエージェントであるトップをいかに管理・監督するかという内部統制と企業のシステムが健全に機能しているかを審査する監査とに分かれる。

この機会に企業統治のあり方を見直し、独立取締役の増加や指名委員会、報酬委員会、監査委員会等の委員会の設置等の検討を行うべきではないか。もっとも欧米企業でも独立した外部取締役といってもトップの仲間うち、友人が就任するケースもあるので、要注意ではある。

以上、今年のビジネス・キーワードに関して概説した。世界銀行が1月8日に発表した世界経済見通しによると、世界経済には「暗雲が立ち込めている」という。今年は、未来への扉えお開く礎を築く年になることを願うものである。拙稿が少しでも参考となれば幸いである。


注:
本稿では個々に出所を明記しなかったが,紙媒体やweb上の記事情報等を参照した.



【竹生孝央(ちくぶ・たかお)】(2011年より孝夫を「孝央」と改名しました)

 


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