今月の提言


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11月の提言:『サービス産業の生産性向上が日本の未来を決める!』

1月の提言:『2018年のビジネス・キーワードは"LINK"!』 2017年の世界経済は米国の景気拡大の持続と新興国の復調の年だった。米国は7月に景気拡大が9年目に入り、2019年7月には史上最長の10年、120か月を抜くとも予測されている。日本も米国の景気に連動して景気拡大が続いているが両国ともに実感なき好況といえる。

今年の世界経済は穏やかながら堅調さを持続すると予測されている。とはいえ、世界は米国がいつ景気下降局面に入るか、そして地政学的リスクに注目している。日本経済もこの2点から大きく影響をうける。それゆえ、世界経済の動きと今後の世の中の潮流をみすえて、それらにリンクした企業行動が一層求められるだろう。こうした観点から、今年のビジネス・キーワードは、

"LINK"

とした。LINKは下記の頭文字をとったものである。

Linkage Between CEO & Operation Mgt(CEOと現場マネジメントの連携) Improve Productivity(生産性の向上) New Trend for Mgt(マネジメントの新しいトレンド) Key Success Factors Drive Strategies(成功の鍵が戦略を推進)

まず、いま日本の製造業の信頼性が問われている。一度失墜したブランドイメージを再生するのは難しい。昨年は欠陥エアバッグのリコール(回収・無償修理)問題を抱えるタカタが民事再生法の適用を申請したほか、日産、スバルでも無資格社員による検査、神戸製鋼所、三菱マテリアルの子会社、東レの子会社では検査データの不正が公になった。この原因は納期とコスト削減にあるといわれている。だが、問題の本質は本社のトップの現場への関与が少ない点にあるのではないか。言い換えれば、経営トップが現場の実情を知らず、現場マネジメントが疎かになっていたのではないか。本社トップから子会社社長へ、子会社社長から現場へ、このマネジメントが機能していなかったと思う。

東レは検査データ改ざん問題を踏まえて、グループ全体の品質保証業務を統括する品質保証本部を設置し、担当役員を置くなどの対策を講じる予定だ。しかし、経営トップが記者会見し、品質に関する理念や再発防止策を自ら語ることはなかった。これではトップの本気度が疑われる。東レ中興の祖といわれた前田勝之助氏であればこうした対応はではなかったと思う。今年は経営トップが現場の実態を把握し、子会社、現場に理念、方針を徹底し、現場マネジメントを改革する年にしてほしい。信頼性を回復するにはトップの本気度と自らの関与が不可欠だ。

次に、生産性向上は昨年のキーワードでもあったが、日本経済及び企業にとって持続的な課題だ。日米の生産性を比較すると製造業で米国の7割、サービス産業で5割の水準である。周知の通り、マクロ経済の観点からは生産性の向上、つまり全要素生産性(TFP)の向上はGDP成長率アップに貢献する。そして個々の企業にとっては、競争優位や付加価値の向上に寄与するのである(注1)。

生産性はアウトプットをインプットで割って算出されるため、生産性の話になると分母のインプットを減らせばよい、あるいは分子のアウトプットを増やす、付加価値の高いサービスを提供すればよいということになる。だが、単に分母のインプットを減少させて生産性を上昇させても長続きするだろうか。結果は前述した不正につながりかねない。また、分母のインプットを一定して分子のアウトプットを増加させることは容易ではない。やはり、生産性向上の鍵はイノベーションにあるのである。すなわち、ビジネスモデル等のイノベーションによるコスト削減。より高い価格での提供が受け入れられる高付加価値商品・サービスの開発、他社にない差別化商品・サービスの提供。この3点を実現するには発想の転換及びイノベーションが求められる。そしてIoTやロボットを含めたAI時代のマネジメントを視野に入れた変革を模索すべきである(注2)。

日本経済、日本企業を変える大きな潮流が顕在化している。つまり、次の3つである(注3)。
  1. パワーシフト
  2. ライフシフト
  3. テクノロジーシフト
第一に、ソ連の崩壊による冷戦構造の終焉と中国経済の台頭によって世界のパワーバランスは大きく変わりパワーシフトが起きている。そして、企業はますます国境を越えてグローバル化し、政府が企業をコントロールすることが難しくなっている。第二に、リンダ・グラットンのいうライフシフトで、日本は高齢化先進国となり、近い将来人生100年時代を迎えようとしている。こうした長寿社会が迫る中で政府も企業も制度の見直しを図ることが肝要だ。第三に、AI(人工知能)が人間の頭脳を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)を控えてテクノロジーシフトが起こりつつある。

こうした潮流を踏まえて、企業は新しい時代のマネジメントを模索することが求められている。あと数年から10年で新しい潮流、トレンドに乗り切れない企業は時代の波に飲み込まれることだろう。世界経済が堅調な時期にこそ未来に向かってマネジメント改革を実行ことが望ましい。もちろん働き方改革のみならずマネジメント全般の見直し、改革が求められる。

最後に、海外売上高比率が高い多国籍企業も超ドメスティック企業も成功の鍵(KSF)が変化している。たとえば、IN-OUT(日本企業による海外企業の買収)あるいはIN-IN(日本企業による日本企業の買収)と呼ばれるM&Aが今後の企業の業績を大きく左右ことになるだろう。この意味で、グローバルにそしてドメスティックに他企業といかに連携していくかが成功の鍵となっている。今年はもう一度自社を取り巻く環境とKSFを再検討し、KSFに基づく戦略の見直しを行ってほしい。

以上、今年のビジネス・キーワードに関して概説した。今年は世界経済が堅調に推移することが見込まれるだけに未来に向けた飛躍への礎を築く年になることを願うものである。拙稿が少しでも参考となれば幸いである。


注1:
2017年11月の提言『サービス産業の生産性向上が日本の未来を決める!』を参照.

http://www.csconsult.co.jp/teigen/1711.html

注2:
拙稿2014年4月の提言『サービス産業の高付加価値化を考える』の一部を加筆修正して引用.

http://www.csconsult.co.jp/teigen/1404.html

注3:
日本経済,日本企業を変える大きな潮流に関しては下記を参考にした.

ニッセイ基礎研究所のコラム「世界を変える3つの潮流〜平成の終わりに考える」(2017年12月)
http://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=57500



【竹生孝央(ちくぶ・たかお)】(2011年より孝夫を「孝央」と改名しました)

 


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