今月の提言


6月の提言:『株主総会の変革に向けて』

今年の3月期決算企業の株主総会シーズンも幕を閉じた。今年は6月27日が集中日で集中率は3割、1995年のピーク時は96.2%なので、格段に分散化したことは確かだ。だが、中身はどうなのか。説明責任を果たしてステークホルダーとのコミュニケーションの絶好の機会を活かしている、と言い切れる日本企業はそれほど多くないだろう。多くは単なるセレモニーで終わっているのではないか。米国企業から学ぶ点はないのか。

たとえば、ウォールマート社は例年6月に株主総会を開催する。今年は6月5日が公式な株主総会で議案の投票などを行う。そして7日はアーカンソー州フェーエットビルにあるアーカンソー大学の2万人弱収容のアリーナ(Bud Walton Arena)で従業員(アソシエイト)と株主が集まる。7日はイベントで一種のお祭りだ(注1)。

今年は女優のジェニファー・ガーナー(Jennifer Garner)が3時間のイベントの司会者。カントリーミュージック・グループのレディ・アンテベラム(Lady Antebellum)、オルタナティヴ・ロックバンドのネオン・トゥリーズ(Neon Trees)、シンガーソング・ライターのビービー・レクサ(Bebe Rexha)が歌い、トリは5人組ロクバンドのワンリパブリック(One Republic)だった。

そして、ドラマ『モダン・ファミリー』のグロリア役で知られるソフィア・ベルガラ(Sofia Vergara)は、低価格ジーンズのコレクションをウォールマートから発表。ソフィアはJet.comの創業者で天才マーク・ロリー(Marc Lore)、現ウォルマートEコマース・アメリカCEOと対談するなど興味深いイベントが満載だ。

また著名な投資家、ウォーレン・バフェットのバークシャー・ハサウェイ社の株主総会は、毎年4月にネブラスカの田舎町・オマハのコンベンションホールで開催される。金曜日から日曜日まで開かれ毎年4万人ほどが集まりコンサートを含む様々なイベントを楽しむ。まさにお祭りだ(注2)。

ところで、大統領就任式にしてもお祭り騒ぎの米国だが、株主総会の日米の違いの背景には会社法の差があることを認識した方がいいだろう。

日本では経営監視機能に関して、株主総会における直接的コントロールの性格が強い。そして、株主総会における株主権の行使は広範囲にわたっている。一方、米国においては、監視機能について取締役会への権限委譲が進んでおり、株主総会での株主権は限定的だ。米国の株主総会の主目的は取締役の選任だといわれている。さらに米国では企業や州の裁量により株主権の差がある点も見逃せない。

具体的には、日本企業では株主は取締役の選解任提案と議決権を有するが、米国企業は選解任の株主提案はできず議決権をもつのみだ。また、日本企業の場合は、配当は株主総会の決議事項だが、米国企業では取締役会で決定できる。

こうした日米の株主総会の位置づけの差が株主総会のあり方に影響している点は否定できない。だが、筆者は米国企業は、株主総会を年に一度のステークホルダーとのコミュニケーションの場として強く意識していると思う。執筆しているだけでエキサイティングでわくわくするような株主総会に参加すれば、従業員や株主などのステークホルダーのその企業に対する好感度は向上することだろう。

日本企業の場合、株主総会での決議事項は多い。そこで提案だが、ウォールマートのように決議のための総会の日とイベント日を分けてはどうか。あるいは、日中は決議で夕方以降にイベントを実施する手もある。

株主総会の集中率が分散し、かつての横並び意識も変わりつつある。日本企業も米国企業のお祭り型株主総会のメリットを考える時期ではないか。そして横並びを脱し、株主総会をステークホルダーとの未来志向のコミュニケーションの場として変革する企業が増える日がくることを期待したい。


注1:
今年のウォールマートの株主総会の概要は下記のリンクを参照.

https://news.walmart.com/2019/03/28/walmart-announces-2019-annual-shareholders-meeting-activities

注2:
バークシャー・ハサウェイ社の株主総会に関しては主に下記を参考にした.

岡本純子「海外企業の株主総会から学ぶ?投資家をファンにする方法」(宣伝会議デジタルマガジン,広報会議2016年6月号)

https://mag.sendenkaigi.com/kouhou/201606/pr-paradigm-shift/008082.php



【竹生孝央(ちくぶ・たかお)】(2011年より孝夫を「孝央」と改名しました)

 


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