今月の提言


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10月の提言:『消費行動の構造変化と明日のヒット商品・サービス』

消費の低迷といわれて久しい。それも当然で日本は主要先進諸国の中で名目GDPが1994年対比で唯一横ばいなのである。すなわち、20年超の間他の先進諸国は全て約2倍に増えているのに日本だけこの間「名目」でみて増えていないのだ。

噛み砕いたいい方をすれば、実際の手取りが増加していないということになる。消費者は実質ではなく名目の手取り所得を元に消費するので、所得が増えなければ消費も増やさないのである。GDP統計は一般に実質で公表されるのでデフレであれば物価下落分が上乗せされ成長していると発表される。マスコミもそのまま記事にするので、国民は実感しない成長を不思議に思うのだ。

こうした環境が続いたことで、各種統計では景気が回復基調にあると指摘されているが、個人消費は盛り上がりに欠ける。所得が増加しつつあるのに消費増に結びつかないのだ。この背景には長い失われた時代を経て消費者の意識が変化した点は否めない。この点を第一生命経済研究所の最近の調査結果で確認すると、次の通りである(注1)。
  1. 経済的に「ゆとりあり」とする割合が2000年に入ってから最も高い値となったが、増加したい支出は「貯蓄など財産づ くり」に向ける。減らしたい支出は、若年層では外食、食費、高年齢層ほど水道光熱費や通信費となる。趣味・娯楽関係支出はいずれの年代でも「国内旅行」が最多。
  2. 消費スタイルは、全年代で「今後は必要最小限のモノだけですっきりと暮らしたい」との意識が高い。また、60代で環境に対する意識が高く、若年層は中古品やシェアリングの利用が多い等、年代差がある。
  3. 「よく考えてからモノを購入するようにしている」「今後は必要最小限のモノだけですっきりと暮らしたい」「今後、あまり使わないモノはレンタルやシェアリング(共有)を利用したい」とする人が多い。つまり、所得が増加すれば消費行動にプラスに働くとは必ずしもいえなくなった。
上記を要約すると、失われた時代を経て消費者は所得が増えても将来に備えて蓄えることを優先し、購買行動は抑制的であるということになる。こうした消費の構造変化は、経済学では限界消費性向の低下と限界貯蓄性向の上昇という。限界貯蓄性向の上昇が長引けばGDPを押し下げることになるので、政府が将来の不安を取り除き、安心して消費できる環境をつくることが急務である。

ところで、たとえ消費が抑制的だとはいえ、企業は明日に向けて消費者ニーズを踏まえた商品・サービスを提供しなければならない。そこで、博報堂生活総研による2018年ヒット予想をみてみよう(注2)。

生活総研によると、ヒット予想のキーワードは「ひとり助け」だという。単身者や共働き世帯の増加などに従って、ひとりでやるべきことが増えている。こうした日常生活の課題を手助けし、支える商品・サービスに注目が集まっているのだ。

では、ヒット予想トップ30にランクされた商品・サービスを元に「ひとり助け」の概要をみてみよう。それは次の4つの分類される。
  1. 「お金」を助ける
  2. 「時間」を助ける
  3. 「能力」を助ける
  4. 「つながり」を助ける
まず、「お金」に関しては、「格安スマホ」(1位)、お店の仲介なしに自分で売買できる「フリマアプリ」(9位)、「副業」(26位)などが注目される。いずれもコスト削減や収入の増加に結びつくものだ。

次に、「時間」については、「宅配ボックス」(2位)、「無人レジ」(8位)、「時短家電」(17位)、「家事代行」(30位)など。時間短縮ニーズや時間に縛られない自由度、随意性を求めるニーズに対応したものだ。

三番目に、「能力」は「高齢ドライバーの事故防止策」(2位)や「自動運転システム搭載車」(6位)、「IoT(Internet of Things)」(13位)などがある。加齢による能力低下や自動化による能力の補完に対応したものだ。

最後に、「つながり」は「インスタ映え」(11位)、「民泊」(14位)など、人々をつなげ共感を生み出したり旅先でホストとの交流を楽しめる商品・サービスだ。

上述した4つ、「お金」「時間」「能力」「つながり」に対するニーズがあることは確かだろう。こうしたニーズを踏まて、いかに魅力ある商品・サービスを提供できるかが近未来に向けて生き抜くために不可欠だ。

生活総研のみならず、日経トレンディ、DIMEなど過去、将来のヒット商品・サービスを調査分析している機関は多い。この機会にこれまでのヒット商品及びヒット予想を分析し未来の商品・サービスづくりの参考にすることをお勧めしたい。


注1:
下記を参照のこと.

第一生命経済研究所『消費者の意識からみるこれからの消費行動 :「ライフデザイン白書」調査より』(2017年10月)
http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/pdf/ldi/2017/rp1710a.pdf

注2:
博報堂生活総研のヒット予測に関しては下記を参照.

博報堂生活総研『生活者が選ぶ"2018年 ヒット予想"&"2017年ヒット商品"ランキングを発表』(2017年10月)
http://seikatsusoken.jp/report/11648/



【竹生孝央(ちくぶ・たかお)】(2011年より「孝央」と改名しました)

 


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