今月の提言


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4月の提言:『トランプ時代にいかに経営するか!』

ポピュリズムが世界に蔓延している。ポピュリズムとは口当たりのいい言葉で大衆に迎合する政治姿勢をいうが、目先しかみずに関税をかけて保護政策をとるなど中長期的には国民の利益をそこなうことは明らかだ。

トランプ大統領のような国家のトップは1期4年で終わりかもしれないが、企業経営は政治の世界とは異なる。経営トップは企業が社会の公器であることを認識し、大衆に迎合せず、自らの使命と高い目標に向かって邁進することで未来を築くことができるのである(注1)。

MITスローンスクールで教鞭をとるダイーナ・ギアーデラ(Daena Giardella)女史は、最近トランプ時代の経営に関して興味深い視点で寄稿していた。超訳的にまとめると、次の通りである(注2)。
  • 不確実性の時代においてリーダーシップの4つの能力のうち「センスメーキング」能力に注力。同時に「即興的リーダーシップ」能力を行使すべき(注3)。
  • 例え大統領が間違った施策を行使しようとしても冷静に自社の顧客、利害関係者に焦点を当てる。
  • トランプは即興的リーダーではなく単に「ブロッカー(妨害者)」。真の即興的リーダーは互いに尊重しあい、実力主義、共感性、完全性、学習への開放性、およびコラボレーションを重視。
  • 新しいトランプの世界(原文は宇宙universe)は経営トップにとってチャンス。トランプの愚行が企業の価値観と従業員との関係を再考するきっかけを与える。多くの企業は従来の階層的から分権的リーダシップモデルを模索。
  • トランプ世界は実世界の実験室として機能し、長期的にはさらに強力な企業や組織文化を構築する機会を与える。
要約すると、トランプ大統領の登場や市場の大きな変化などに直面すると、今何が起こっているかの意味を理解し、新たな変化やパターンを識別する能力であるセンスメーキング、意味づけが大事だということだ。そして、任期限定の大統領が間違った判断をしようとも、企業のトップは自社の顧客や利害関係者の側にたって何をすべきを考えるべきだという。また、トランプを反面教師として、真の即興的リーダーシップを発揮して、未来に向けた強い企業、企業文化を構築すべきだと述べているのである。

では、求められる4つのリーダシップ能力のうち「センスメーキング」とは何か。まず、4つの能力は下記の通りである。
  1. Sensemaking(意味づけ)
  2. Relating(関係づけ)
  3. Visioning(ビジョニング:ビジョンを描く)
  4. Inventing(インベンティング:ビジョン実現の新しい方法の創造)
最初のセンスメーキングとは、さまざまな情報から正しく現状認識したうえで目標に向かって新たなマップやモデルを創出する能力をいう。リレイティングはオープンなコミュニケーションを通じて信頼関係を構築する能力で、ビジョニングは不確実性の時代に本質的なリーダーの中核能力で未来に向かって明快な絵を描くことである。最後のインベンティングはビジョンを実現するための革新的、創造的方法を生み出すことを意味する。

上述した通り、センスメーキングとは不確実性の高い時代において、変化に応じたマップやモデルを創出する能力をいうのである。これなくして説得力のある納得できるビジョンは描けない。トランプの世界になって、まずは変化マップをどう描くかが肝要なのだ。

ところで、トランプ大統領が誕生して100日が経過したが、移民政策、国境税そしてメキシコとの壁など公約通りにはいかず見送られているのが現状である。共和党や議会あるいは司法の良識が功を奏した形でトランプの愚策がコントロールされているといってよい。問題は不確実性の高いトランプ施策をどうみるかだ。現状でセンスメーキングするにはシナリオライティングの手法をとるしかないだろう。

日本企業のトップの何人かはトランプ大統領の施策に対してさまざまな反応を示した。代表的なのは、トヨタ、ソフトバンク及びユニクロのファーストリテイリングだ。大きく分ければ、トヨタ、ソフトバンクはトランプ追随型、ファーストリテイリングはトランプ回避型といえる。ファーストリテイリングは小売業だけに国境税や輸入関税をかければ業績に大きく影響するだけに、「米国撤退」は有力な戦略オプションの一つである。

トランプ大統領を含む世界の不確実性が高まっている今日、変化のシナリオを描いてみてはどうか。そのうえで新たなビジョンとビジネスモデルの構築が求められている。ギアーデラ女史が指摘しているように、トランプ大統領によってもたらされた環境変化を逆手に取って未来に向けて進化する時である。


注1:
「企業は社会の公器である」とは,いうまでもなく松下幸之助翁の名言である.

注2:
ダイーナ・ギアーデラ(Daena Giardella)女史の記事全文は下記を参照のこと.

"How should companies operate in the age of Trump?" via THE HILL(April 26, 2017)

http://thehill.com/blogs/pundits-blog/the-administration/330476-how-should-companies-operate-in-the-age-of-trump

注3:
4つのリーダシップ能力に関して,詳しくは次のビデオとPDFファイルを参照.

"Deborah Ancona: The 4-Capabilities Model" via MIT

http://leadership.mit.edu/mit-sloan-professor-on-the-4-capabilities-of-leadership/

"The Four Capabilities of Leadership(PDF)" via Saylor Academy

http://www.saylor.org/site/wp-content/uploads/2013/09/Saylor.orgs-The-4-Capabilities-of-Leadership.pdf



【竹生孝央(ちくぶ・たかお)】(2011年より「孝央」と改名しました)

 


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