今月の提言


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1月の提言:『2017年のビジネス・キーワードは"LEAP"!』

2016年の世界経済はリーマン・ショック直後の2009年以来初めて3%を下回る見込みだ。これは米国の減速が大きく影響したものだ。従って、日米欧の景気の足踏みとインド及びアジアの堅調さが目に付く年であったと総括できる。新興国BRICsの中でもインドの7%台の成長と6%後半に減速した中国、そしてマイナス成長が続くロシア、ブラジルと明暗を分けた。

今年は日欧の低迷は続くものの米国はトランプ新政権の積極財政や減税などの効果で先進国経済は持ち直すであろう。新興国は中国の減速が見込まれるが、インドの堅調な伸びとロシア及びブラジルのマイナス成長からの脱却が予想されるなど明るさがみえてきた。今年は今月20日に米大統領に就任するトランプ氏の言動に世界が注目し、それがさまざまな影響を及ぼす年になりそうだ。

2017年はトランプ新政権の政策や欧州の選挙結果によっては反グローバリズム、保護主義の波が大きなうねりとなるリスクはある。しかしながら、世界経済は大きな転換点を迎えることは確かで、今年はこうしたリスクを乗り越え未来に向けての「飛躍」の年になることを祈願している。こうした観点から、今年のビジネス・キーワードは、

"LEAP"

とした。LEAPは下記の頭文字をとったものである。

Leadership in Low Growth Economy(低成長経済におけるリーダーシップ)
Emerging Countries' Recovery(新興国の回復)
AI Age Management(AI時代マネジメント)
Productivity Improvement(生産性向上)

最初のリーダーシップに関しては最後に述べるとして、あとの3つを説明したい。先月の提言で述べたように、日米の生産性を比較すると製造業で米国の7割、サービス産業で5割の水準である。周知の通り、マクロ経済の観点からは生産性の向上、つまり全要素生産性(TFP)の向上はGDP成長率アップに貢献する。そして個々の企業にとっては、競争優位や付加価値の向上に寄与するのである(注1)。

ただ、経営トップが生産性向上というと現場では冷めた受け取り方をする企業も少なくない。多くの企業は従業員を削減し、営業力を強化して売上増や付加価値増を狙い生産性を上げる努力をしている。だが、結果として生産性が数字でみえてこないのはデフレで単価が下がっていることに起因することが多い。名目GDPを20年前と比べると主要先進国で日本だけがマイナスあるいは横這いでは、分子が増えないのは当然である。

生産性をここでは労働生産性として、分母は投入量を従業員数かマンアワー、分子の産出量は付加価値額としよう。そうすると、付加価値額は同じでも投入量が少ないか、投入量が同じで付加価値額が増えれば生産性は向上することになる。もちろん投入量が減って産出量が増えればもっと生産性が向上することは自明である。これまで生産性向上といえば分母を削減する、イコール効率化という固定観念がなかったろうか。ここは発想を変えて分子の増加に注力したい。

では、付加価値を向上させるにはどうすればよいか。かつてサービス産業の高付加価値化について述べたことがあるが、これはすべての産業に当てはまる。すなわち、次の3点である(注2)。
  1. ビジネスモデル等のイノベーションによるコスト削減。
  2. より高い価格での提供が受け入れられる高付加価値商品・サービスの開発。
  3. 他社にない差別化商品・サービスの提供。
上記の3点を実現するには発想の転換及びイノベーションが求められる。そしてIoTやロボットを含めたAI時代のマネジメントを視野に入れた変革を模索すべきではないだろうか。

それから、今年は前述したように米国の復調とともに新興国の回復の兆しがみえてくる見込みだ。今年はアジアを始め新興国のエリア・ポートフォリオを再考し、次代に向けての戦略的なグローバル展開を試みるべきだと思う。その際、進出国の市場のポテンシャルを考慮することはいうまでもない。だが、新興国の成長モデルが雁行形態モデルすなわち輸入代替モデルから輸出代替モデルへ、さらに並走型成長モデルへと移行している現状を踏まえて、進出先の取捨選択が行われるべきである(注3)。

最後に、企業の盛衰は経営トップの能力、リーダーシップに大きく左右することを痛感するこの頃である。20年余にわたる日本経済の低迷で企業間格差はより明確になっている業界も少なくない。言い換えれば、トップのリーダーシップによる戦略の差が業績、格差の差になっているといえるだろう。低成長の時代こそトップのリーダシップによる戦略の立案と実行が求められる。

以上、今年のビジネス・キーワードに関して概説した。今年は世界経済の環境変化が見込まれる中で飛躍の年になることを願うものである。拙稿が少しでも参考となれば幸いである。


注1:
2016年12月の提言:『2016年経済・ビジネス10大ニュースと来年の課題』を参照.

http://www.csconsult.co.jp/teigen/1612.html

注2:
2014年4月の提言『サービス産業の高付加価値化を考える』で述べた3点を一部修正して引用した.

http://www.csconsult.co.jp/teigen/1404.html

注3:
「並走型成長モデル」に関しては下記の坂田一郎・佐々木一『アジアの奇跡と新成長モデルの時代』を参照のこと.

http://pari.u-tokyo.ac.jp/publications/WP12_06.html



【竹生孝央(ちくぶ・たかお)】(2011年より「孝央」と改名しました)

 


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