今月の提言


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1月の提言:『2008年は戦略で"LUCK"を呼び込もう!』


2008年は難しい年になりそうだ。米国はサブプライムローン問題で先行きが不透明で、世界経済への影響が懸念される。一方、「デカップリング」論なるものがある。米国経済が減速したとしても、BRICsなどの新興諸国の高成長に支えられ世界経済全体としては堅調に成長するというものだ。米国経済の減速をどうみるかによるが、筆者はデカップリング論はあまりにも楽観的過ぎると思うのだが、読者の方々はいかがお考えか。

ところで、たとえ世界経済に陰りがみえたとしても、戦略の巧拙が業績の明暗を分けるのである。今年は世界の景況に左右されず、戦略の巧みさ、マネジメントの質の高さで「幸運」を呼び込むことを願って

"LUCK"

をキーワードとした。これは下記の4つの頭文字をとったものである。

Leadership for the Future(未来のリーダーシップ)
Unbundling on competition(競争上のアンバンドリング)
Culture Based Management(企業文化ベースの経営)
KFS of Strategy Reconsidered(戦略成功要因の再考)

「企業の業績はリーダー次第」というのは今や仮説とはいえず、検証されつつある。本提言でも何回か指摘しているとおり、リーダー次第で企業は大きく変わる。リーダーシップのあり方が問われる所以である。ここでリーダーシップとは、強烈なカリスマ経営者の存在を前提にしているわけではない。世の中にはさまざまなリーダーシップ論があるように、リーダーシップは多様なのである。そして重要なのは、リーダーシップを発揮できる人物、リーダーは育成できるという点である。「12月の提言」でも述べたように、今年は是非「未来のプロの経営者」を発掘、育成する年にしてほしい。

「アンバンドリング」という言葉はコンピュータ業界や金融業ではお馴染みである。コンピュータ業界のアンバンドリング(バリューチェーンの分解)は、1969年に米国司法省がIBM社を独占禁止法違反で提訴した時点まで遡る。翌年IBM社は、ハードとソフトを分離したビジネスモデルに移行した。他方、金融業では、サービサー(債権管理回収業)など金融機能のアンバンドリングが進行している。しかしながら、筆者はすべての業種でバリューチェーン(価値連鎖)活動を今一度見直すべきだと思う。一層付加価値を高め、持続的な競争力を維持するには、バリューチェーンの再検討が不可欠だからだ。今年は業界を超えて自社のバリューチェーンを再チェックして、アンバンドリングの競争戦略上の意義を再考し、実行してはどうか。

上述したとおり「企業の業績はリーダー次第」である。しかし、日本企業の競争力の源泉は、従業員の現場力、つまり日常の創意工夫やインセンティブの高さなどにあることはよく知られている。そして、リーダーの強さと従業員の現場力が相俟って持続的な競争力を形成する背景には「企業文化ベースの経営」がある(注1)。企業文化とは企業内の人々が共有する価値観や信条、行動規範をいうが、最近の実証研究によると企業文化の強い企業は弱い企業と比べてパフォーマンスが高いことがわかっている(注2)。今年は経営理念によって明示的に示される企業文化、自社「らしさ」の役割を見直し、理念の一層の浸透を図る年にしてはどうか。

経営戦略とは以前にも指摘したとおり、簡単にいえば「ライバルに勝つためのプラン」といえる。そのエッセンスは、ドメイン、つまり事業領域の設定とKFS(Key Factor for Success = 重要成功要因)の明確化である。筆者は今年は各業界のKFSが変化していないか、各社にとって過去の成功要因に執着しすぎていないかを十分に点検してほしいと思う。その上で再検討したKFSを踏まえた「勝つ戦略」へと戦略を再構築すべきである(注3)。

2008年は現在の戦略を見直し、"LUCK"を呼び込む戦略への転換の年になることを期待したい。


注1:
この点はすでに80年代にオオウチやパスカルらの下記の書籍によって指摘されていた点でもある。

Pascal, R. T. and A. G. Athos, The Art of Japanese Management, Simon and Shuster, 1981.(邦訳『ジャパニーズ・マネジメント』講談社, 81年)
Ouchi, W.,Theory Z; How American Business Meet the Japanese Challenge, Addison-Wesly, 1981.(邦訳『セオリー・Z』CBSソニー出版, 81年)

注2:
企業文化とパフォーマンスに関する実証研究については次の論文を参照。

Hirota, S., K. Kubo and H. Miyajima, Does Corporate Culture Matter? An Empirical Study on Japanese Firms, RIETI DIscussion Paper Series 07-E-030, 2007.

注3:
エレクトロニクス、自動車などの製造業、情報通信産業に関しては「スマイルカーブ」にみるようにKFSがバリューチェーンの川上および川下に移行している。また、サービス産業についても、たとえばスーパーマーケット、コンビニ、ファストフードなどは、KFSが好立地を確保する「物件開発」から、よりよい商品をより安く提供するための「調達力」「商品開発力」などへシフトしている。



【竹生孝夫(ちくぶ・たかお)】

 


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